2017-07-30
梅雨もだいたい明けて夏本番といったところでしょうか。
そこで百貨店の夏のものの一つのニュースから
この記事によるとお中元を贈答用でなく、自分用に買う人が増えているという。確かに現在、百貨店の中元受付売り場に行くと、必ず持ち帰り用お得商品のコーナーが用意されている。自分が贈ったものを実際に食べてみたい利用してみたいという気持ちや、ある程度の支出をした直後であるなら、自分用に少し買うくらい”誤差”の範囲というのもあるだろう。
またお中元シーズンが落ち着くと今度は「解体セール」が始まる。中元の品物は基本的に化粧箱に入っているものばかりだ。贈答用であるし、配送品がほとんどであるから当然である。
で、その箱を明けてしまってバラ売りし、割安な価格でお客様に提供するのだ。このセールも各百貨店本当に人気でものすごい人が集まっている。贈答品なのである程度の品質は担保されているため、何を買っても(百貨店だし)安心できるのだ。
記事の中にはお中元をギフトではなくイベントとする必要があるとあるが、全くそのとおりだろう。誕生日もクリスマスもバレンタインもモノを上げることが目的ではなく、物のやり取りを含んだイベントを誰かと楽しむことに意味がある。お中元も、例えば誰かに何かを贈れば、連絡を取って話してみる。その人に贈ったモノと同じものを買ってきて、家族と共有するなど、年に1回(歳暮も入れると2回)のイベントを是非楽しめる仕組みを作っていって欲しい。
高島屋バイヤー、県産野菜を収穫 都内で28日から直売イベント:福島民友ニュース:福島民友新聞社 みんゆうNet
今現在、百貨店のバイヤーで本当に現地を飛び回ってより良い商品を探し回っている人というのはどのくらいいるのだろうか。これだけ情報・流通が発達した今、百貨店が探してきて、世に普及させられるものはほとんど無いのではないだろうか。
一昔前は百貨店がキュレーターとして、世の中の様々な素晴らしい商品を紹介することができたが、現在ではどうだろうか。
この記事でも地方に高島屋のバイヤーが行ったことそのものがニュースになっているように見受けられてしまう。もちろん美味しい野菜なのだろうが、ニュースからはどのようなものなのか伝わってこなかった。
もちろん簡単なことではないので、いっその事諦めてしまうというのは手だ。ただバイヤーという名がつく限り、買い付けを行う職種に見える。新卒で採用試験を受ける学生でもバイヤーをやりたいという声は多い。
「ジャンプの船木」百貨店でパイ売り 現役続行の陰で:朝日新聞デジタル
催事会場と言うのはほとんどがその百貨店の人間でないのはもちろん、いつもその百貨店で働いていない人たちで構成されている。スキージャンプの長野五輪、金メダリストの船木和喜さんも現在では全国を飛び回って百貨店で販売をしているそうだ。
船木さんのお陰で売上が伸びれば、メーカーも店舗も万々歳だ。今のところ人だかりができてしまって大変なことになっているようでもなさそうだ。
ただ催事場というのは常に人が入れ替わるという問題はある。もちろんそれが魅力ではあるのだが、何しろ館の情報・ルールを知らないのだ。お手洗いがどこにあるか知らない従業員も珍しくなく、お客様からの聞かれても答えられず、クレームになることも。
でも専門の販売員は入れなければならない。
ここは仕組みでなんとか解決して欲しい。お客様が困ることを減らすこと。臨時の従業員でもある程度の対応ができるマニュアルの作成。特にできればITを使って解決して欲しい。催事場は百貨店の大きな魅力であるのだから、それを邪魔する要素は減らしていって欲しい。
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2017-07-23
今週もまた残念なニュースが流れてきましたね。このニュースを見ると売上が下がったというニュースはまだいいものに思えてきます。
お中元の送料値上げ 大手デパートカルテルか | NHKニュース
まだ疑いの段階ではあるがお中元などの送料を一斉に値上げする不正なカルテルを結んでいた疑いが大阪の各百貨店に掛けられ、立ち入り検査が行われている。独占禁止法違反の疑いがあるということです。
消費者が怒っているのもは最もですが、一番起こっているのは百貨店(テナント含む)の従業員かもしれません。小売、特に百貨店ではお客様への誠実さが求められ、それは店舗として会社としても力を入れるよう必ず従業員に指導しています。誠実さはかなり主観的判断になるものの、これを全く意識していない従業員はいないことでしょう。
クレームが発生してしまえば、その気持が足りないなどという精神論の議論をふっかけられることもあります。ただ、この業種をしている以上、そういった精神的な部分で(特にお客様から)指摘されることはある程度はしょうがないとは思えます。
ただ今回の価格カルテルが本当だとしたら、会社・業界としてそういう意図ではないかもしれませんが、お客様を不利益にさせようと動いていたことになります。
こういったことは従業員が日々、お客様に信頼を積み重ねていったものを一瞬で崩壊させてしまうのです。
信頼が要の仕事をしていることを今回のことで再確認できたかと思います。本当に最低限の話ですが、法令遵守だけは守って欲しいものです。
日本百貨店協会が発表した6月の全国の百貨店の売上高は、昨年同月比で1.4%増えて、4720億円あまりとなり、2か月ぶりのプラスです。
要因としてはセールの前倒しがあるので、7月も見てみないことには本当に好調なのかはわかりません。
6月30日が月末金曜日となり、セールの前倒しをしたが、今でもプレミアムフライデーの効果はそれほど感じられていないらしい。
国がやる部分はもうこれ以上ないと思われ、あとは民間企業が一生懸命魅力あるプレミアムフライデーを作っていくことでしか、これ以上の浸透は難しいだろう。
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2017-07-19
7月12日から三越伊勢丹グループのセールが始まりましたね。
伊勢丹新宿夏のセール初日は6400人 「ギャルソン」が圧倒的人気│WWD JAPAN
昨年よりも開店に並んだ人数は増えたようです。セール時期を変えていない三越伊勢丹がこうして支持されているというのは業界としても喜ばしいことではないでしょうか。
その一方でこのような記事も
大手百貨店、3社が増収=早めのセール効果-6月:時事ドットコム
6月の百貨店売上高は大手3社、Jフロントリテイリング、高島屋、そごう・西武は増収となった。が、これは結局セールの前倒しが起因しているだけで、トータルで見たら前年と同じかそれ以下であろう。
この見出しも「セール効果」という表現をしており、悪いことではないという意味に聞こえるが、結局業界全体の首を締めているということを全く自覚していない。
それでは7月はどうやって売上を取るのだろうか。
そもそもセールをこうも早くやってしまうと本当に消費者というのは定価で買うのが馬鹿らしくなってしまう。夏本番前の6月にもう夏物がセールで変えてしまうのだ。いったいいつ定価で夏物を買うのだろう。ファッションが好き、新商品が好きという人ならそんなの気にならないかも知れないが、昨今のアパレルの状況を鑑みてもやはり消費者の不信感はあるように思える。
それから夏のセールとっても全くお祭り感がない。正月のセールはまだ正月の雰囲気、福袋効果もあってかお祭り感がある。以前も紹介したが、グーグルトレンドを百貨店で検索してみると、百貨店の検索が大きく増えるのは明らかに年末年始なのである。それに対して夏セールの6~7月には全く検索結果が増えていない。
このお祭り感がない原因の一つはセールの前倒しもある。セールを前倒しだ!と叫んでいるのは百貨店で各アパレルメーカーはそうはいってもそんな早くにセールを展開するところばかりではない。
撤退してしまったが、例えば三陽商会時代のバーバリーはセールをやらないため、夏のセールだろうが冬にセールだろうが一切セールはやっていない。
夏のセールなんて特に百貨店に行くとわかるが、セールをやっているブランドやっていないブランドがあまりにも混在している。同じメーカーでさえ別れてしまっていることもある。それではみるだけでも一苦労だ。
本当にセールで売上を取ろうという考えっていうのは何も考えていないに等しい、またはそれ以下だ。当たり前だが安く売ることで利益を削っているのだから。
この盛り上がりの無さを感じると、本当にあらゆる意味で「セール」を見直さなければ行けないと感じてしまった。
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2017-07-11
今週はこちらの記事を
三越伊勢丹・大西前社長が激白!「全てはのれんと雇用を守るためだった」 | DOL特別レポート | ダイヤモンド・オンライン
三越伊勢丹の前社長である大西洋氏のインタビューだ。
大西氏は「店舗の構造改革が必要だ」という発言が最終的には解任の決め手となってしまったが、それを世間は地方店の閉鎖と解釈していたが実はそうではなかったのだ。
大西氏は地方店がその地域でどれだけ重要な役割を果たしているかを考え、(大丸松坂屋とは違って)のれんを残しつつ利益を伸ばし雇用を守っていくという考えだったようだ。雇用を守るというのは単純に頑張ればいいとう話ではない。売上・利益を伸ばしていって初めて雇用が守れるのだ。
そのために彼はオフィスやホテルなども入った複合施設を構想していたみたいだが、結局は実現とはならなかった。
複合施設となれば、それだけテナント屋に近くなるのかと思いきや、そうではなく、彼もまたリスクを極度に回避したがる(結局はこれがハイリスクとなってしまったが)消化仕入れを痛烈に批判している。そして自社製品にも注力し100億円規模のSPA事業にも取り組み始めていた(三越伊勢丹HD、SPA化の推進で「新たな店舗モデル」へ | Fashionsnap.com)
結局彼のやり方が正しいのかどうかはやってみないとわからないのはもちろんだが、このままの百貨店を続けていく限り、業界は衰退していくのは間違いない。
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2017-07-02
今週もちょろっと日経の一面に百貨店の話題がありましたね。
まーたAmazonか…と思われるかもしれませんが、今やもうAmazonなしに小売は語れないということでご勘弁いただきたい(笑)
Amazonの2016年度の売上高が1兆円を突破。突破と言っても15年度比17.5%増の1兆1747億円と、軽々とクリアしている。「ゾゾタウン」を運営するスタートトゥデイは、16年度の売上高が763億円と40%増加しており、その他、前年並みすら維持できない小売との成長率の差が浮き彫りとなった。
三越伊勢丹グループの売上高が1兆2000億円なので、まだAmazonジャパンより三越伊勢丹のほうが売上は高いことになるが、この成長率であれば1年後には抜かれていることとなる。
もちろん抜かれることが悪いわけでも、顧客層が同じわけでも無いので、単純な比較は正解ではないのだが、売上を前年すら保てないのが百貨店業界なわけで、業界内岳を見ていても一切正解は見つからないわけである。こうして他の業界と比べてみることも大事なこととなる。
例えば百貨店各社のECサイトを見ると圧倒的に品揃えが悪い、自社で扱っているブランドでさえ満足に売ることができていない。消化の商品が多いし、そもそも売上が上がらないECサイトのために商品を並べられないということだろう。
だが、こんな体だけのECサイトを運営していて何の意味があるのだろうか?採算とれなくても商品を並べるか、取れないならもう辞めてしまうかを選んだほうがいいだろう。
それからこんなニュースが
これが売上につながるかとはは分からないが、とにかく店に足を運んでもらう、また大企業としての社会的意義も果たせる。インターネットでの販売ができないのなら、こういった地域とつながる取り組みを続けていくしかないだろう。
DM製作、百貨店開拓 買い物客層別 ワールドプリンティング :日本経済新聞
上記記事と矛盾するようなことを言ってしまうが、未だに百貨店の広告の大きな手法はDMだ。未だに郵便物を利用して宣伝しているのだ。
若年層にとってはDMなんてものはゴミと変わらず、ただの迷惑に感じることが大きいが、百貨店の客層にはDMが響くのだろう。
正直メール(メールも迷惑に感じてしまうが)やLINEに切り替えて言ってほしいが、顧客がそれを望んでいないのもまた事実である。
DMは画一的なものか、販売員が手書きで丁寧に書いたもののどちらかとなるが、なんとかその間をとるプリンター技術を使うようになったようだ。
印刷業界としても低迷が続く中、印刷の需要がある百貨店に対して新しいアプローチ方法を提供したという形であろう。
正直、買い回り履歴もある程度溜まっているであろうから、ディープラーニングを利用してより精度の高いDMを提供するなどするともっと面白そうだ。
結局はバイヤーの勘頼みなDMになってしまうからだ。
それでは最後のニュースはこちら。横浜高島屋では横浜地方で35度以上と予報した翌日に、冷やし甘酒を無料で振る舞うとのこと!これは行ってみたい!と思ったが先着30名とのこと。
なんとケチ臭い…私が現場の人間だったらたくさんお客様に謝らないといけなさそうだなと若干の憂鬱になる話だ。